プロテインDIY日記

プロテインをおいしく飲むことに執念を燃やしているブログです。

LabDoor(プロテインTOP10ランキング)の安全性評価があやしい

こっちの記事の中でLabDoorというサイトがプロテインに重金属等が含まれるかどうかをテストしてくれてるよというのを紹介したんだけど、

oishiku-protein.hatenablog.com

これ、やっぱりあてにならないなと思い直したので書いておく。

1. 重金属の検出限界が高すぎる

これ↓はわたしが飲んでいるマイプロテインのノンフレーバーのやつに関するLabDoorのリポートをキャプチャで引用するんだけど、

f:id:shepherdess:20170626163503p:plain

わたしはこの、

This product passed all heavy metals assays, with levels of compounds like arsenic, lead, and cadmium all below 1.0PPM (parts per million).

っていう文言を見て、あー重金属は入ってないんですねーいいですねーって思っちゃったんだけど、ちょっと待って、below than 1.0PPM


1.0PPM = 1μg/g*1でしょ、てことはプロテイン1scoopが30gなら30μg以下ならPASSするってことだ。これはつまり前の記事でわたしが泣く泣く諦めたSunfoodの植物性プロテインの5倍くらいまでセーフだし、都民が1日に食事からとる量*2の3倍弱までセーフだということになる。いやそれおかしいくない?


で、LabDoorにメールで質問してみようかと思ったんだけど、検索したら同じ内容を reddit 上で指摘している人がいて、

www.reddit.com

「"below than 1.0PPM"って何も意味なくない?」って言っている人に対して、LabDoorのアカウント*3がつけた回答がこれ↓ (さらに下で訳してるので面倒な人はスクロールして↓)


ざっくりまとめると、

  • 現行のプロテインランキングを作成した2014年当時は検出限界が1.0PPMの方式で試験していて、それで検知されたかされなかったかのデータしか持っていない。なので1.0PPM以上かどうかを安全の基準とした。
  • 再調査して新しいプロテインランキングを作成する予定で、そこでは検出限界が1.0PPB=0.001PPMの検査方式を採用する予定。その上で、安全とするレベルは以下にする予定
  • 新しいプロテインランキングは今年の終わりまでに発表できればと思う(当該ポストの日付は2015年9月)
  • 重金属の再テストをするにはLabDoorが検査してきた全てのプロダクト×約$300のコストがかかるので、必要性は認識しているが大変なこと


とのこと。もし新しい基準での再検査が実現されれば、1scoopが30gとして、1scoop中の量が0.03μgから検出できて、鉛でいうと3μg以下ならPASSという基準になるってことっぽい。現在よりだいぶ実用的な基準にはなりそう。


同じく前の記事で紹介したConsumer Reportsの方↓は、

www.consumerreports.org

3回分の量のうちの含有量で示していて(プロテインは1日3回くらい摂取する人もいるから正しいよね)、鉛でいうとリストされてる中で一番少ない量で検出されているのが0.2μg/3回量。検出されていないホエイプロテインも多くリストされている。

比べて見ると「3μg以下ならPASS」みたいなPASS or NOTだけじゃなくて、検出量を書いてくれた方が断然参考になりそう。まあ、これについては期待して待つしかない。言えるのは2014年公開の現行版ランキングにおける重金属含有の有無はほぼ全く参考にならないぞっていうことだけ。


※LabDoorはあてにならなかったけど、Consumer Reportsの方から「ホエイプロテインには必ずしも重金属は含まれない」ことがわかるので前回の記事の結論に変わりはないです。



2. フレーバー間の違いを考慮していない

LabDoorのランキングの1位と3位はマイプロテインのホエイなんだけど、

labdoor.com

これを見ると1位の安全性(Ingredient Safety)の得点が100点、3位が98点。検査されたプロテインの平均が61点。1位と3位の2点の差がどこから来ているかはわからないので置いて置くとして、この得点が低いプロテインを見てみると、

例えばこれ、Dymatize ISO-100 っていうプロテイン

labdoor.com

これは72点。で、なんで点が低いのっていうの説明部分をキャプチャで引用すると、

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甘味料としてスクラロースが入ってるから。でも、スクラロースは安全性の高い甘味料だと書いてある。


でもね、実は1位と3位のマイプロテインのプロダクトもフレーバーつきのものはスクラロースが入っている。

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分離ホエイプロテイン(アイソレート)のご購入| Myprotein.jpより引用

マイプロテイン、味ごとに香料、色素、甘味料とかを何を使っているかちゃんと一覧できるようにしてくれてるので、甘味料として全てのフレーバーつきのプロテインスクラロースが添加されていることが確認できる。


だからマイプロテインのプロダクトとこのDymatize ISO-100を比較したら、マイプロテインの方がフレーバーつきだったら、安全性の得点は両者同じになるべきとわたしは思う。他に違いが書かれてないんだし。

でもLabDoorはそもそも何味を測定したかも書いてないし、しかも1位や3位のマイプロテインのプロダクトの詳細画面に行くと、”BUY FROM LABDOOR”とか言ってフレーバー付きのプロダクト売ってくる。

f:id:shepherdess:20170626213047p:plain Myprotein Impact Whey Isolate Review - Labdoor


これは無いわーと思ったら reddit 上に全く同じことを言っている人がいて、

www.reddit.com

それに対するLabDoorの回答がこれ↓

ざっくりまとめると、

  • LabDoorが調査したマイプロテインのプロダクトはノンフレーバーで、フレーバー付きのものにはスクラロースが含まれていることは認識している
  • 将来的には全てのプロテインの全てのフレーバーを調査したいが今は無理

いやこれダメでしょ

このランキング、もう科学的でもなんでもないじゃん。 だってノンフレーバーがラインナップにあるだけで全フレーバー含めて高得点になって(少なくとも高得点に見えるようになって)、フレーバーつきは医学的にほぼリスクのない(と少なくともLabDoorが言っている)スクラロースが入ってるだけで30点近く減点なんでしょ?で、医学的にリスクの認識されている重金属については意味のない検出水準でテストして「問題ない」としてるわけでしょ?それはちょっと厳しいよ。


目指してることろの趣旨には賛同するし、応援したいけど、今の段階でLabDoorのランキングが信頼性のおけるものだとも科学的だとも思わないです。きっと中の人たちがevilだってことじゃなくて、スタートアップのつらみなんだろうとは思うけど*4。まあ、大変なんだろうなあ。頑張って欲しい。

*1:FAQ - (一財)日本食品分析センター

*2:http://oishiku-protein.hatenablog.com/entry/2017/06/26/063000

*3:なりすましじゃないと思うけどreddit詳しくないので確認はできていない。

*4:ここ https://angel.co/labdoor を見ると医療情報の扱いで話題になったDeNAとかも出資してるのがわかる。100%勝手な想像なんだけど、もし自分がちゃんと科学的な価値ある情報を提供したいと思ってビジネスを立ち上げて、出資者(エンジェル)から「科学的でなくてもいいから科学的に見せて、とにかく早く売り上げを立てろ」みたいなことを言われたら辛すぎて胃に穴が開くだろうなーとか思った。